Care&Cure2


秋山知里・大坂慶多・西尾祐樹・松田望

<事例の要約>

障害を持つ子の兄弟児について
 モデルケースは父親・母親・兄(小学校3年生)・妹(小学校1年生)の4人家族。
 妹が難病を発病し、治療のために他県の病院に入院。母親もその付き添いとして妹と共に他県に移り住む。
 兄(以下兄弟児とする)は、父親を2人で生活をすることになる。
 以前から兄弟児は家事の手伝いをしていたために母親はそのまま妹(以下難病児とする)の入院後も同じように家事をさせていた。
 1ヶ月ぶりに兄弟児が父親と共に他県の病院を訪れた時、兄弟児は母親を「ママロボット」と呼んで拒絶する。
 母親は、その夜母親を拒絶する兄弟児を抱きしめて眠った。
 翌朝、兄弟児の反応は難病児の入院前に戻っていた。
 難病児が退院したときには、一時的に兄弟児の反応も通常に戻った。
 再び難病児が入院した時に、兄弟児に情緒不安定の傾向が見られたので、母親は兄弟児をそれまで難病児を通わせていた難病児の団体に通わせるよう働きかける。
 同団体に通うようになってから、兄弟児にそれまでにない変化が見られ、少しずつ精神が安定傾向を見せるようになった。


1.はじめに

 このケースの問題提起
 ・母親の不在による兄弟児のストレス
 ・兄弟児・難病児それぞれへの親の関り方
 ・物理面、精神面、金銭面での難病家族に対する援助方法



2.考えられる援助方法

 具体的な援助方法を物理面、精神面、金銭面、さらに個人でもできるような"小さな援助"と、団体などの支援を必要とする"大きな援助"とに分けて考察する。


"小さな援助"
 小さな援助としてあげられるものには4つある。
 まず1つ目は、身近なところからできる援助としては、兄弟児の家に友達が遊びに来るなど、できるだけ兄弟児を一人にさせないことが大切である。
 担任や、クラスメートなども協力して、兄弟児の一番身近な環境である"学校"という単位で兄弟児をサポートすることが必要である。

 2つ目は母親不在の時の父親の対応である。
 ビデオのケースでは父親の存在があまりにも薄く、子供を支えるだけの力が不足していた。
 父親に、より身近な家族だからこそ、兄弟児を精神的に支えることが必要である。
 父親に兄弟児を精神面で支える方法を教える公共のシステムが必要である。
 また、それがなくても、父親が少し早く仕事から帰ってくる、子供と週末を一緒に過ごすなどの対応をとることが必要である。

 3つ目は、兄弟児にある程度自分が好きなことができる環境を用意することである。
 いくら、難病児の入院前から家事を手伝っていたとはいえ、母親が不在のいわば欠けた家庭において、これまでと同じような家事の負担を兄弟児に強いることはそれだけで兄弟児の負担となりうる。
 それを強いるのであれば、兄弟児にとって安心できる場所となりうる好きなことができる環境を与えることが必要である。
 いわば、"アメと鞭"によって兄弟児の負担を少しでも軽減することができると考えられる。
 また、これと関連して、「お兄ちゃんだから」という押し付けは兄弟児にとって望ましくない。自分の意思で家事ができる環境をつくることが大切である。

 4つ目は病気になる前から少しずつ家庭環境が変化したときの対応を考え、それを子供に躾けておくことが大切である。


"大きな援助"

 大きな援助としては、3つのことがあげられる。
 1つ目は小さな援助の1つめとやや重複する部分があるが、学校や兄弟児の担任などが兄弟児をサポートすることが大切である。特に、兄弟児は慣れない状況にストレスを感じているために、普段と変わらない部分での環境を維持することに尽力することが大切である。

 2つ目は同病の患者団体などを通じて難病児・兄弟児双方に関わる家族をささえることができるようにすることが必要である。
 具体的には、家族が難病児に付き添わなければならないような場合、病院に家族が宿泊できるようなスペースは皆無であることが多いので、家族が宿泊できるような施設を病院の近くに常時確保しておくことなどである。

 3つ目は上記の2つ目と同じように外側から難病児の家族をサポートする方法として、同じように同病の患者団体などで資金面での援助を行えるようにすることである。
 難病の治療自体は、保険や公的機関の援助が受けられるものの、家族の宿泊費や交通費、その他細かい出費は大抵の家計にとっては大きな負担である。少ない金利あるいは、無金利で一時的にお金を借りられるような機関の存在があれば、少なくとも金銭面での心配をすることがなくなる。そのことは、心の余裕を作ることにも繋がり、結果として少しでも兄弟児へ目を向ける余裕を作ることに繋がると考える。


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